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送り火  文藝春秋  重松清

f0071477_20584728.jpg家族のきずな、子育て、老いた父母のこと、郊外のニュータウンと新宿を結び、沿線各地から富士山が望めることから名づけられた富士見線。この沿線に広がる街を舞台に、そこに住む人々の小さなドラマを綴った連作短篇集。

一番印象に残ったのは、タイトルとなった「送り火」
喘息気味で外で遊べない子供のために、校外の遊園地の前のマンションを購入した親子の物語。
引越して間もなく、無理がたたって亡くなった父親。子供を育てるために働き通しだった母。にぎやかな遊園地からの声に耳をふさぎたくなるほどの孤独の中で耐える娘。
やがて娘は家を出て、遊園地も閉園となり、年老いて一人で古びたマンションで暮らす母を自分達と一緒に暮らすよう説得するために、娘は久しぶりにマンションを訪れる。

夜、枕を並べながら、無理してこんな家を買って、家族と夕食と食べることもできず、休日も仕事ばかり、挙句に過労で亡くなった父を家族の犠牲になったという娘に、母は、家族がおいしいご飯を食べられて、楽しく暮らせることが父の幸せであって、その中に自分が入っていないことは関係ないことだったと伝える。
子供の頃の写真を見ると、いつも父と娘の写真ばかりで母の写真がほとんどないのも、母は二人の姿を写真に撮ることがうれしかったのであって、自分が写る必要はなかったのだと。

今は、親も家族を楽しませることと同時に、自分が楽しむということを重要視する。でも、昔は自分のことは
どうでもよくて、家族が楽しんでいることが自分が楽しむことだったという内容に、はっとさせられた。
別に現在の姿を批判しているわけではない。時間の使い方も遊び方も多種多様となり、子育て中でも自分自身も大事にする。そういう今の時代と、昔を比べてどちらがいいかといっているわけでもない。
でも、なにか重く響くものが残る、そんな小説だった。
by ohtanmak | 2009-06-02 20:58 | 読書記録
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